インベスティのクラウドファンディング応援ブログ

新しい物大好き中年がクラウドファンディング製品を紹介します

巨匠 小津安二郎の名作を現代に甦らせるプロジェクト

映画パンフレット 「東京画」 監督/脚本/ナレーション ヴィム・ベンダース 出演 小津安二郎/笠智衆/厚田雄春/ヴェルナー・ヘルツォーク

みなさん、こんにちは。

クラウドファンディングによって世に送り出された製品を紹介するインベストです。

2018年も、残す所あとわずかとなって参りました。

クリスマスも終わり、お正月休みは何をしようか、なんて考えている人も多いかとは思います。

帰省や旅行など、予定が決まっている人は良いですが、年に一度のお正月くらいのんびりしたい!!

そんな事を考えている方にお勧めしたい、日本が誇る銀幕の巨匠に関するプロジェクトを、今回は紹介していきます。

世界に誇る名匠 小津安二郎の作品をデジタル化

readyfor.jp

皆さんは小津安二郎をご存知でしょうか?

昭和、とりわけ戦中や戦後生まれの方には懐かしい、映画監督として名高い方ですね。

静寂と共に広がる美しい映像は海外でも評価が高く、黒澤明氏と共に日本の巨匠として認知されています。現在でも、海外の映画祭などでは小津安二郎の作品が上映される事があるそうです。

しかし、彼の残した作品を、現在では全て視聴することは出来ません。

なぜなら、作品の大半はフィルムが消失しているためです。戦前から戦後にかけて活躍したため、戦中の混乱から残っていない物が多いのです。

また、創作活動当時は、映像フィルムを後世に見られるよう保管しておく、という考え方が薄かった事も影響しています。

かつて映画と言うものは、新しい作品をどんどん作って、どんどん消費していく、というスタイルが主流でした。そのためマスターフィルムは破棄されている事も少なくなく、上映用のフィルムも上映の重ねる度に傷み、上映後は決して良好とはいえない状態で保管がされていました。

そこで現存しているフィルムをデジタル修復し、世界に名だたる小津作品を、より多くの人々に提供できるようにしよう、というのが今回のプロジェクトです。


時間との闘いだったデジタルリマスター化

復刻に当たっては、まず現存するフィルムを探す所からスタートしました。

彼の所属した松竹にてマスターフィルムは一部残されていましたが、フィルムというものは経年劣化によって伸びたり縮んだりして、形そのものが変わってしまうのです。

また、保存に対する技術や手法が確立していなかったため変形だけでなく傷も多く、音楽や映像そのものが歪んだり、飛んでしまっている事も少なくありません。

そういった現状の中で、ハリウッドのデジタル化専門の会社の協力を得ながら、上映100分の作品を一コマ、一コマ、合計150万コマ以上を一つづつスキャンをしてデジタル化を進めました。

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しかし、スキャンデータはフィルムが痛んだ状態の物を読み取ったため、中には俳優の顔が引き伸ばされたりと、オリジナルからは劣化が著しいものも少なくありませんでした。また、撮影当時の画調も色彩も、経年劣化により失われています。

そのため、当時の撮影に関わったスタッフを探し出し、現存する他作品と見比べながら、改めて原版に近い形でのデジタル復元に挑んだのだそうです。

こうして沢山の技術と多くの手間を掛けてデジタル化が行われました。

その修復作業の資金源となったクラウドファンディングプロジェクトは、目標500万円に対して600万円の資金を調達出来ました。

支援者に対するリターンとして、デジタル化されたブルーレイディスクなどがありました。

また、完成後の試写会へのご招待などもありましたが、2015年に上映された試写会では、支援者の多くの拍手喝采を受けたのだそうです。

そして、デジタル修復された作品を観た小津氏の遺族からも、

「私と同じ年に誕生した伯父の映画がこんなに綺麗に見られるとは驚きです」と感激した面持ちだった。

「晩春」デジタル修復レポート第三回【国際タッグ】

<p > と、松竹がリリースした修復レポートには綴られています。

 

作り込まれた映像美と常識を覆した撮影手法

それでは改めて小津映画の魅力について、お話します。

子供の頃に、よく両親がモノクロ映画で見ていたため、知ってはいました。が、今回、記事の執筆に当たり、改めて小津作品を拝見した感想です。

まず、第一に目を惹くのが、静寂の中に描き出される美しい日本の風景です。

日本家屋、日本様式、日本の言葉。

映しだされるかつての日本の風景、家族の在りようは、ただ懐かしいだけではなく、全てが計算されているかのような美しい映像を作り出しています。

登場人物達も、ややもすれば説明口調ともいえる抑揚を抑えた台詞回しで、激しい場面転換やカメラワークもありません。

昨今のテレビでは、視聴者を飽きさせないようスピード感が求められているそうですが、激しい展開なんかなくても、一つの画面にどんどん引き込まれていきます。

聞くところによれば、小津監督は自らカメラで確認し、厳密に構図を作りこんでいくスタイルなのだそうです。調度品のひとつひとつひとつにこだわり、演者にも自身の構想に沿った完璧な演技を求めるそうです。

また先ほども書きましたが、出演者ひとりひとりが淡々と、抑揚を抑えつつ感情を込めた演技は、物語が進むにつれて観る者を魅了していきます。

激しい表現に慣れている方からすれば『棒読み』とも取られかねませんが、台詞一つ一つの間に訪れる静寂や、演者を正面から見据えて仕草のひとつも取り逃す事無く撮影する手法は、観る者の登場人物への感情移入を呼び起こします。

激しい表現、激しい場面ばかりに人の心は動かされる訳ではないんですね。

沢山の人々の支援を受けて、沢山の人々の技術を結集してもデジタル化に挑んだ価値のある作品でした。

現代に甦った匠の名作

 2015年にデジタル化プロジェクトは終わり、現在はブルーレイなどで好評販売中です。ご興味のある方は是非、手に取って下さい。

 

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